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極上の湯と旬の味わい〜箱根・マイユクール祥月の美食探訪 取材レポート

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四季折々の表情を見せる箱根の山々。その懐に抱かれるように佇む「ホテルマイユクール祥月」を訪れたのは、紅葉が始まり立つ秋の終わり。東京から約90分という近さながら、ここに一歩足を踏み入れると、そこには日常とは隔絶された静謐な時間が流れていました。

古くから「湯治場」として親しまれてきた箱根は、今や年間2000万人が訪れる日本有数の温泉リゾート地。その豊かな自然は、訪れる者の心を癒すだけでなく、芦ノ湖の鱒や山の幸など、食の宝庫としての一面も持ち合わせています。

今回の取材では、その自然の恵みを余すところなく活かした創作和食と、源泉100%かけ流しの名湯を兼ね備えた「ホテルマイユクール祥月」に滞在し、総料理長・中村誠氏にも特別にお話を伺う機会に恵まれました。

山々の紅葉に彩られた箱根で過ごした二日間。その地が育んだ食材と、それを生かす料理人の技と心が織りなす「箱根グルメの真髄」をお届けします。

目次

箱根の魅力と歴史

箱根は神奈川県南西部に位置し、富士箱根伊豆国立公園の一部を形成する風光明媚な温泉地として知られています。古くは平安時代から湯治場として栄え、江戸時代には東海道五十三次の難所「箱根八里」として旅人たちを悩ませた場所でもありました。

箱根の歴史は縄文時代にまで遡ります。箱根火山の噴火によって形成された地形は、長い年月をかけて現在の姿となりました。平安時代には源頼朝が箱根権現(現在の箱根神社)に参詣したという記録が残っており、鎌倉幕府の時代から重要な宗教的拠点として認識されていました。

江戸時代に入ると、徳川幕府は箱根に関所を設け、東海道の要衝として厳重に管理しました。関所を通過するには通行手形が必要であり、特に江戸から出る女性に対しては厳しい検査が行われました。これは「入鉄砲出女」と呼ばれる幕府の政策の一環でした。

明治時代になると、箱根は保養地として外国人にも注目されるようになります。1878年には初代イギリス公使オールコックが芦ノ湖畔に別荘を建て、その後も多くの外国人や日本の要人が箱根に別荘を構えました。近代的な温泉リゾートとしての発展は、この時期に始まったと言えるでしょう。

大正から昭和にかけて、交通網の整備とともに観光地としての箱根は飛躍的に発展しました。1919年に開通した箱根登山鉄道や、1930年に完成した駒ヶ岳ロープウェイなどのインフラ整備により、より多くの観光客が訪れるようになりました。

現在の箱根は、年間約2000万人の観光客が訪れる日本を代表する温泉リゾート地として確固たる地位を築いています。豊かな自然、多彩な温泉、歴史的建造物、美術館など、様々な魅力が詰まった観光地として国内外から高い評価を受けています。

箱根の名所を訪ねて

芦ノ湖と箱根神社

箱根を代表する景観スポットである芦ノ湖は、約3000年前の箱根火山の噴火によって形成されたカルデラ湖です。周囲約18kmのこの湖は、四季折々に美しい姿を見せてくれます。春には湖畔の桜、夏には緑濃い森、秋には紅葉、冬には時に雪化粧した富士山を背景に静かな水面が広がります。

芦ノ湖畔に鎮座する箱根神社は、平安時代前期(757年)に創建されたと伝えられる由緒ある神社です。水の守り神として崇められ、九頭龍伝説でも知られています。朱色の鳥居が湖に映える「平和の鳥居」は、多くの観光客に写真スポットとして親しまれています。

「箱根神社にお参りすると、この地域の守り神である九頭龍神様のご加護を受けることができるとされています。特に水にまつわるご利益があると言われていますよ」と、地元のガイドさんは教えてくれました。

大涌谷

箱根火山の活発な火山活動を間近で感じられる大涌谷は、「黒たまご」で有名な観光スポットです。硫黄の香りが漂う中、地面からは白い湯気が立ち上り、まさに生きている大地の息吹を感じられます。

「大涌谷で茹でられる黒たまごは、殻が硫黄の成分で黒く変色したものです。1個食べると寿命が7年延びるという言い伝えがあります。実際には硫黄と鉄分を含む温泉水で茹でることで殻が黒くなるんですよ」と、黒たまご売店の店主は笑顔で説明してくれました。

大涌谷は2015年に小規模な水蒸気噴火があり、一時立入禁止となった期間もありましたが、現在は安全対策が施され、再び多くの観光客で賑わっています。火山の恵みと脅威を同時に体感できる貴重なスポットです。

箱根登山鉄道と箱根ロープウェイ

箱根観光の移動手段として人気の箱根登山鉄道は、小田原から強羅までを結ぶ山岳鉄道です。最大傾斜80‰(パーミル)という急勾配を登るスイッチバック方式は、鉄道ファンにも注目されています。車窓から眺める箱根の山々の景色は格別で、特に紅葉シーズンは多くの乗客で賑わいます。

「この鉄道は1919年に開通し、当時は箱根の交通革命と呼ばれました。それまで馬車や駕籠で数時間かかっていた道のりが、格段に短縮されたのです」と、箱根登山鉄道の駅員さんは歴史を語ってくれました。

箱根ロープウェイは大涌谷から桃源台までを結び、空中から箱根の絶景を楽しむことができます。晴れた日には富士山や相模湾まで見渡せる360度のパノラマビューは圧巻です。

「ロープウェイからの眺めは季節によって全く表情が変わります。特におすすめは冬の晴れた日の富士山です。雪をかぶった富士山と青空のコントラストは言葉では表現できないほど美しいですよ」と、ロープウェイのスタッフは教えてくれました。

箱根美術館とポーラ美術館

自然と芸術が融合する箱根には、多くの美術館が点在しています。その中でも、箱根美術館は日本庭園と古陶磁器のコレクションで知られる歴史ある施設です。1952年に開館し、苔庭と紅葉の美しさで多くの来館者を魅了しています。

「当館の日本庭園は四季折々の表情を見せますが、特に初夏のアジサイと秋の紅葉は見事です。庭園を眺めながら抹茶を楽しめる茶室もございますので、ぜひ日本の伝統文化もご体験ください」と、館長は丁寧に案内してくれました。

一方、2002年に開館したポーラ美術館は、西洋絵画と日本の洋画、ガラス工芸などの近代美術品を収蔵しています。モネやルノワールといった印象派の作品から、藤田嗣治などの日本人画家の作品まで、幅広いコレクションが楽しめます。

「自然の中に佇む美術館として設計され、建物自体も芸術作品のひとつと言えるでしょう。季節によって変わる周囲の自然と館内の芸術作品が呼応する空間を、ぜひゆっくりとご堪能ください」と、学芸員の方は作品への思いを語ってくれました。

ホテルマイユクール祥月 〜極上の滞在と美食体験〜

歴史と施設概要

箱根の緑豊かな山々に囲まれた仙石原に位置するホテルマイユクール祥月は、2005年に開業した比較的新しい高級リゾートホテルです。フランス語で「千の花」を意味する「マイユクール」と、宿の願いを込めた「祥月」を組み合わせた名前には、「訪れるお客様に幸せな時間を過ごしていただきたい」という思いが込められています。

敷地内には、四季折々の自然を感じられる日本庭園が広がり、全42室の客室はすべてが異なるデザインで設えられています。温泉は100%源泉かけ流しの「仙石原温泉」で、無色透明の単純泉は肌に優しく、疲労回復や美肌効果があるとされています。

「当ホテルは、箱根の自然を最大限に生かした設計になっています。ロビーの大きな窓からは四季折々の景色が広がり、お客様にはまず自然の美しさに感動していただけるよう心がけています」と、総支配人の佐藤氏は語ります。

客室と温泉

マイユクール祥月の客室は和モダンをベースにした落ち着いた雰囲気で統一されています。特に人気の高い露天風呂付き客室は、プライベートな空間で温泉を満喫できると常に予約が埋まっている状態です。

「お部屋ごとに異なるデザインを採用しており、リピーターのお客様には前回と違う趣の部屋をご用意するようにしています。特に人気なのは、富士山を望める南側の客室です」と、フロントマネージャーの田中氏は説明してくれました。

大浴場「月の湯」と「花の湯」は、男女日替わり制で両方の雰囲気を楽しめるよう配慮されています。内湯と露天風呂があり、特に露天風呂からは箱根の山々を眺めながらゆったりと湯に浸かることができます。

「当館の温泉は仙石原温泉の源泉100%かけ流しです。無色透明のさらりとした湯触りが特徴で、長湯しても肌が乾燥しにくいと多くのお客様に好評をいただいています」と、温泉管理担当の鈴木氏。「朝6時から夜12時まで営業していますので、早朝や夜の静かな時間帯にもぜひゆっくりとご入浴ください」。

美食の世界

マイユクール祥月の最大の魅力のひとつが、総料理長・中村誠氏が手がける創作和食です。地元箱根の食材を中心に、季節感あふれる料理の数々は宿泊客からの評価も非常に高いものとなっています。

「箱根には素晴らしい食材が揃っています。芦ノ湖の鱒、足柄牛、地元の野菜や山菜など、四季折々の食材を最も美味しい調理法で提供することを心がけています」と中村総料理長。

朝食は和食と洋食から選べるスタイルで、特に和食の朝食は炊きたての土鍋ご飯と共に出される小鉢の数々が絶品です。夕食は季節ごとに変わる会席料理が基本となり、特別な日には個室での料亭風の食事も可能です。

「私たちは『一期一会の料理』を大切にしています。同じメニューでも季節や天候によって食材の味わいは変わります。その日最高の状態でお客様に提供するために、毎朝市場に足を運び、最良の食材を選んでいます」と、中村料理長は熱く語ります。

夕食で特に人気の「箱根の恵み会席」を注文すると、前菜から始まり、お造り、椀物、焼き物、蒸し物、強肴、食事、デザートまで、約8品の繊細な料理が順に供されます。特に足柄牛の溶岩焼きは、目の前で調理されるパフォーマンスも楽しめる一品です。

「お客様の表情を見ながら調理することで、最高の瞬間を演出したいと思っています。料理は味だけではなく、視覚や嗅覚、さらには音や触感まで含めた総合的な芸術だと考えています」と中村料理長。

取材インタビュー:中村総料理長との対話

私たちは滞在中、中村総料理長に特別にインタビューする機会を得ました。料理長室で行われたインタビューでは、料理に対する情熱と哲学を熱く語っていただきました。

―― 料理人を志したきっかけは何だったのでしょうか?

「幼い頃、祖母の作る料理に感動したことがきっかけです。特に記憶に残っているのは、祖母が作る季節の炊き込みご飯です。春は筍、夏は鮎、秋はきのこ、冬は牡蠣など、その時々の旬の食材で作る炊き込みご飯は、今思い出しても香りが蘇るほど印象的でした。その体験から『食で人を幸せにしたい』と思うようになりました」

―― 箱根の食材で特に気に入っているものはありますか?

「やはり芦ノ湖の鱒でしょうか。清らかな水で育った鱒は身が引き締まっていて、淡白ながらも旨味が強い。刺身はもちろん、塩焼き、燻製にしても美味しいですね。また、箱根の山で採れる山菜や茸類も素晴らしい。特に春のタラの芽やコシアブラ、秋の松茸など、都会では味わえない自然の恵みを提供できることが箱根の強みだと思います」

―― 料理を作る上で大切にしていることは?

「『素材を活かすこと』と『季節感を大切にすること』です。どんなに高度な技術を持っていても、素材の良さを引き出せなければ意味がありません。また、日本には四季があります。その季節ならではの食材や調理法、器使いなどを通じて、お客様に季節の移ろいを感じていただきたいと思っています。例えば夏なら涼を感じる演出、冬なら温かみを感じる盛り付けなど、食を通じて季節を表現することを心がけています」

―― 若い料理人に伝えたいことはありますか?

「基本に忠実であることと、好奇心を持ち続けることの両方が大切だと思います。和食の基本技術はとても奥深く、一生かけても極められないほどです。その基本をしっかり学びながらも、新しいものに挑戦する姿勢を忘れないでほしいですね。また、料理は『おもてなし』の心が根本にあります。お客様に喜んでもらいたいという気持ちを常に持ち続けることが、良い料理人になる秘訣だと思います」

箱根グルメ旅のまとめ

箱根は古くから温泉地として親しまれてきた歴史ある観光地であると同時に、豊かな自然の恵みを活かした食文化も発展してきました。芦ノ湖の水産物、箱根山の山菜、足柄の肉牛など、地元の食材を生かした料理は、訪れる観光客を魅了し続けています。

特にホテルマイユクール祥月では、その豊かな自然の恵みを最大限に活かした創作和食を堪能することができます。四季折々の食材と、それを生かす技術と心を持った料理人たちの存在が、箱根のグルメを一層豊かなものにしています。

温泉で体を癒し、美しい景色で心を満たし、そして地元の食材を活かした料理で舌を楽しませる。箱根でのグルメ旅は、まさに五感すべてを満足させる贅沢な体験と言えるでしょう。

次回箱根を訪れる際には、ぜひこの地の歴史や文化に思いを馳せながら、地元の食材を活かした料理を味わってみてください。きっと箱根の新たな魅力を発見することができるはずです。

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この記事を書いた人

実際に行ってみて本当に楽しかった場所や食事のお店を紹介しています。

みなさんのお出かけの参考になりましたら嬉しいです。

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